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逆転有罪の美濃加茂市長「高裁の判断と闘う」「政治家は誰にも会えなくなる」
逆転有罪の美濃加茂市長「高裁の判断と闘う」「政治家は誰にも会えなくなる」 記者会見で語る藤井浩人市長
受託収賄罪などに問われた岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長に対する控訴審で、名古屋高裁は11月28日、一審の無罪判決を取り消して懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金30万円の逆転有罪判決を言い渡した。「プール浄水設備導入をはたらきかけるため現金30万円を渡した」などとする業者供述の信頼性を認め、検察側の主張に沿った判決に対し、藤井市長は公判後の記者会見で「まったく受け入れられない」と反発、弁護団は速やかに最高裁へ上告する方針を示した。記者会見での主なコメントは次の通り。(ジャーナリスト・関口威人)
● 「現金授受はなかった」
藤井浩人市長(以下、藤井) 控訴審判決が出たが、大変驚いている。繰り返し申し上げるが、現金の授受はなかった。この点について、裁判所の判断は受け入れられない。判決理由は当初、逮捕されたときの検察側の主張そのままではないかと感じた。一審で私の話せることはすべて話してきた。このような判断をするのであれば、私の話を(もう一度)聞くべきであったと思う。
郷原信郎弁護士(以下、郷原) きょう聞いた限りでは、非常に問題だらけの判決だと感じている。まず第一に控訴審で(一審無罪判決)破棄、自判で有罪という判断がなされることは、手続き的にいってもあり得ないだろうと思っていた。最終的に被告人(藤井市長)供述の信用性や(贈賄側で詐欺罪などで実刑判決が確定した)中林(正善受刑者)供述と相反する(会席時に同席していた)T供述の信用性などについてごく簡単に触れて、中林供述の信用性に影響を与えるものではないなどとしているが、最も問題なのは被告人がこの法廷に出廷していたにもかかわらず、まったく話を聞こうとせず、重要証人であるTの証言もまったく立ち返ろうともせず、その信用性を否定するやり方は、到底受け入れられない。
裁判所が中林証言の信用性を認定する最大の根拠にしたのは(中林の知人ら)2人の供述のようだが、その証言がどういう態度で、いかに不自然で、信用できないものだったか、傍聴した人なら分かるだろう。ほとんど問題にされる余地のない証言だったというのが正直なところではないか。それを控訴審判決では、すべて書面で、証人尋問の記録だけで判断して、それが中林証言の裏付けだという。こんな形で一審では直接、証人尋問や被告人質問などをして3人の裁判官が無罪という判決を出した裁判で、ほとんど直接、証人尋問をせず、被告人質問もせず、その結論をひっくり返してしまうとは、憲法で保障された裁判を受ける権利を侵害しているに等しい。
●「控訴審の争点除外された」
もう一つ、まったく予想外だったのは、控訴審でわざわざ中林の再尋問をしたのは「一審では相当な時間をかけて証人テストが行われていたため、供述が合理的で証拠と整合性のある内容になるのは当然。控訴審では証人テストなどを一切行わず、生の記憶を確かめるために呼ぶ」と裁判長自身が言っていた。ところが、一審の判決書きが(中林受刑者の弁護士によって)刑務所に送り届けられたために、その目的がまったく果たせなかった。であるなら、その経過の中で中林の意図がどのように働いているのかが最も重要なところで、われわれは最終弁論で詳細に中林の証人尋問の内容を分析した。そこから、中林の虚偽証言の動機が十分にうかがわれるというのがわれわれの判断だった。
ところが、それについてもまったく触れようとしない。結局のところ、きょうの裁判は、控訴審でやったことを無視し、検察が控訴趣意書で最も力説していた「中林証言を離れて間接事実を追って現金の授受があったと推認する」ことも否定している。控訴審の争点をほとんど除外して、一審の段階の証拠に戻って、しかも直接、証人尋問や被告人質問をやったわけでもない裁判官が、一審とは違った判断を下したという、まったく許しがたい判決だ。なぜこういう判断に至ったのか、まったく理解しがたいことだが、詳細を判決書きで確認した上で、あらためてコメントをしたい。少なくとも到底承服できる内容ではなく、藤井市長自身が判断することだが、われわれとしてはただちに上告する方向で考えている。
神谷明文弁護士 きょうの裁判は、第一に間接事実からは有罪は推認できない。第二に被告人が原審と同じことを言ったとしても、中林の供述は信用できると言ったわけだが、その大きな理由としては、知人2人の証言をよりどころとしている。しかし、この2人はどういう人だったか、そして中林が搾取したおカネはどこに行ったのか。あまり具体的には言えないが、中林と関係のある人たちを通じて上部の団体におカネが流れていたというふうにしか思えない。だからこの2人は到底信用できないとして、一審の裁判官もそれを理解した上で2人の証言を問題にせず、一審の無罪判決が出たわけだから、きょうは本当に意外な判決だった。控訴審で中林が何を言ったかは問題になっていないが、「本当は検察に控訴してほしくなかった」とはっきり言った。なぜこんなことを言うのか、それは後ろめたいものがあるからだ。そんなことを言う被告人には初めて会った。
●「市長の職は続ける」
藤井 私としては本来きょう、市民の皆さんにやっと終わると報告ができると期待していたが、こういった形になった。しっかりと今回の判断とは闘っていかないといけない。そしてもう一つ、私自身は市長の役を続けていきたいと思っているが、市民の皆さんともう一度相談をしていきたいと思っている。これからも被告人という立場で、市政に影響は出ていた。これからも影響があるかどうかと言われれば、影響はあるだろう。
郷原 被告人供述の信用性については記憶があいまいで、あいまいな供述しかしていないというが、一方で入念な証人テストを何回もやってきた中林の証言が具体的であるのは当たり前。その中林が意図的に虚偽供述をしたのであれば、受け取っていない側は印象に残るものが何もなく、覚えている方がおかしい。肝心の被告人供述の信用性を否定する理由があまりにも薄弱だ。それならせめて、目の前にいる被告人に聞いてみればよかった。
きょう裁判所が最初に挙げていたTの供述調書は、だまして取ったようなもの。Tが「(中林が藤井にカネを)渡したところは見ていない」と強く否定した上で、警察は「席を外したとしか考えられないではないか」という調書を取っている。ところがその後、警察も検察もその調書を使おうとしていない。使えないからだ。意味がないから。そんなものを引っ張り出してきて、供述の信用性を否定する根拠にするなど、まったく不当極まりないやり方だ。
最初に結論ありきの判決だ。(今回の控訴審の村山浩昭)裁判長は袴田事件の再審(で釈放を決めた)のときは「耐えがたいほど正義に反する」などと、警察を批判する印象的なフレーズをつくった人が、今度は逆の方に、予想外の有罪の方向にするというパフォーマンスを発揮したのかなと思わざるを得ない。
●「政治家が活動できなくなる」
藤井 私が逮捕された時点から主張しているが、このような形で、現金授受がまったくないのに、現金を渡したと認められるようだと、政治家は誰にも会えないし、何も活動しない方がいいということになってしまう。何かするとこういう形でとりあげられてしまうのではないかと。事実でないことをでっち上げて、それが認められるということはあってはならない。それについては私に課せられた責務として、闘わなくてはならないと思っている。
郷原 こういうことが当たり前にあると、政治活動ができなくなってしまう。贈賄供述者が、意図的な虚偽供述をしかねない人物であったのが今回の特徴。しかし、それが2年後ぐらいまでには導入されるであろう司法取引制度においては、自分が有利になりたいがための虚偽供述が制度的にできてしまう。それを考えたときに、今回のような判断が政治活動に関連する事件で行われるというのは大問題だ。これからもこういう判断はいろんな面で出てくるだろうが、今回の裁判では上告して、この控訴審の判断をしっかり調整して、いい先例に結び付けられるようにしたい。
逆転有罪の美濃加茂市長「高裁の判断と闘う」「政治家は誰にも会えなくなる」
逆転有罪の美濃加茂市長「高裁の判断と闘う」「政治家は誰にも会えなくなる」 記者会見で語る藤井浩人市長
受託収賄罪などに問われた岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長に対する控訴審で、名古屋高裁は11月28日、一審の無罪判決を取り消して懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金30万円の逆転有罪判決を言い渡した。「プール浄水設備導入をはたらきかけるため現金30万円を渡した」などとする業者供述の信頼性を認め、検察側の主張に沿った判決に対し、藤井市長は公判後の記者会見で「まったく受け入れられない」と反発、弁護団は速やかに最高裁へ上告する方針を示した。記者会見での主なコメントは次の通り。(ジャーナリスト・関口威人)
● 「現金授受はなかった」
藤井浩人市長(以下、藤井) 控訴審判決が出たが、大変驚いている。繰り返し申し上げるが、現金の授受はなかった。この点について、裁判所の判断は受け入れられない。判決理由は当初、逮捕されたときの検察側の主張そのままではないかと感じた。一審で私の話せることはすべて話してきた。このような判断をするのであれば、私の話を(もう一度)聞くべきであったと思う。
郷原信郎弁護士(以下、郷原) きょう聞いた限りでは、非常に問題だらけの判決だと感じている。まず第一に控訴審で(一審無罪判決)破棄、自判で有罪という判断がなされることは、手続き的にいってもあり得ないだろうと思っていた。最終的に被告人(藤井市長)供述の信用性や(贈賄側で詐欺罪などで実刑判決が確定した)中林(正善受刑者)供述と相反する(会席時に同席していた)T供述の信用性などについてごく簡単に触れて、中林供述の信用性に影響を与えるものではないなどとしているが、最も問題なのは被告人がこの法廷に出廷していたにもかかわらず、まったく話を聞こうとせず、重要証人であるTの証言もまったく立ち返ろうともせず、その信用性を否定するやり方は、到底受け入れられない。
裁判所が中林証言の信用性を認定する最大の根拠にしたのは(中林の知人ら)2人の供述のようだが、その証言がどういう態度で、いかに不自然で、信用できないものだったか、傍聴した人なら分かるだろう。ほとんど問題にされる余地のない証言だったというのが正直なところではないか。それを控訴審判決では、すべて書面で、証人尋問の記録だけで判断して、それが中林証言の裏付けだという。こんな形で一審では直接、証人尋問や被告人質問などをして3人の裁判官が無罪という判決を出した裁判で、ほとんど直接、証人尋問をせず、被告人質問もせず、その結論をひっくり返してしまうとは、憲法で保障された裁判を受ける権利を侵害しているに等しい。
●「控訴審の争点除外された」
もう一つ、まったく予想外だったのは、控訴審でわざわざ中林の再尋問をしたのは「一審では相当な時間をかけて証人テストが行われていたため、供述が合理的で証拠と整合性のある内容になるのは当然。控訴審では証人テストなどを一切行わず、生の記憶を確かめるために呼ぶ」と裁判長自身が言っていた。ところが、一審の判決書きが(中林受刑者の弁護士によって)刑務所に送り届けられたために、その目的がまったく果たせなかった。であるなら、その経過の中で中林の意図がどのように働いているのかが最も重要なところで、われわれは最終弁論で詳細に中林の証人尋問の内容を分析した。そこから、中林の虚偽証言の動機が十分にうかがわれるというのがわれわれの判断だった。
ところが、それについてもまったく触れようとしない。結局のところ、きょうの裁判は、控訴審でやったことを無視し、検察が控訴趣意書で最も力説していた「中林証言を離れて間接事実を追って現金の授受があったと推認する」ことも否定している。控訴審の争点をほとんど除外して、一審の段階の証拠に戻って、しかも直接、証人尋問や被告人質問をやったわけでもない裁判官が、一審とは違った判断を下したという、まったく許しがたい判決だ。なぜこういう判断に至ったのか、まったく理解しがたいことだが、詳細を判決書きで確認した上で、あらためてコメントをしたい。少なくとも到底承服できる内容ではなく、藤井市長自身が判断することだが、われわれとしてはただちに上告する方向で考えている。
神谷明文弁護士 きょうの裁判は、第一に間接事実からは有罪は推認できない。第二に被告人が原審と同じことを言ったとしても、中林の供述は信用できると言ったわけだが、その大きな理由としては、知人2人の証言をよりどころとしている。しかし、この2人はどういう人だったか、そして中林が搾取したおカネはどこに行ったのか。あまり具体的には言えないが、中林と関係のある人たちを通じて上部の団体におカネが流れていたというふうにしか思えない。だからこの2人は到底信用できないとして、一審の裁判官もそれを理解した上で2人の証言を問題にせず、一審の無罪判決が出たわけだから、きょうは本当に意外な判決だった。控訴審で中林が何を言ったかは問題になっていないが、「本当は検察に控訴してほしくなかった」とはっきり言った。なぜこんなことを言うのか、それは後ろめたいものがあるからだ。そんなことを言う被告人には初めて会った。
●「市長の職は続ける」
藤井 私としては本来きょう、市民の皆さんにやっと終わると報告ができると期待していたが、こういった形になった。しっかりと今回の判断とは闘っていかないといけない。そしてもう一つ、私自身は市長の役を続けていきたいと思っているが、市民の皆さんともう一度相談をしていきたいと思っている。これからも被告人という立場で、市政に影響は出ていた。これからも影響があるかどうかと言われれば、影響はあるだろう。
郷原 被告人供述の信用性については記憶があいまいで、あいまいな供述しかしていないというが、一方で入念な証人テストを何回もやってきた中林の証言が具体的であるのは当たり前。その中林が意図的に虚偽供述をしたのであれば、受け取っていない側は印象に残るものが何もなく、覚えている方がおかしい。肝心の被告人供述の信用性を否定する理由があまりにも薄弱だ。それならせめて、目の前にいる被告人に聞いてみればよかった。
きょう裁判所が最初に挙げていたTの供述調書は、だまして取ったようなもの。Tが「(中林が藤井にカネを)渡したところは見ていない」と強く否定した上で、警察は「席を外したとしか考えられないではないか」という調書を取っている。ところがその後、警察も検察もその調書を使おうとしていない。使えないからだ。意味がないから。そんなものを引っ張り出してきて、供述の信用性を否定する根拠にするなど、まったく不当極まりないやり方だ。
最初に結論ありきの判決だ。(今回の控訴審の村山浩昭)裁判長は袴田事件の再審(で釈放を決めた)のときは「耐えがたいほど正義に反する」などと、警察を批判する印象的なフレーズをつくった人が、今度は逆の方に、予想外の有罪の方向にするというパフォーマンスを発揮したのかなと思わざるを得ない。
●「政治家が活動できなくなる」
藤井 私が逮捕された時点から主張しているが、このような形で、現金授受がまったくないのに、現金を渡したと認められるようだと、政治家は誰にも会えないし、何も活動しない方がいいということになってしまう。何かするとこういう形でとりあげられてしまうのではないかと。事実でないことをでっち上げて、それが認められるということはあってはならない。それについては私に課せられた責務として、闘わなくてはならないと思っている。
郷原 こういうことが当たり前にあると、政治活動ができなくなってしまう。贈賄供述者が、意図的な虚偽供述をしかねない人物であったのが今回の特徴。しかし、それが2年後ぐらいまでには導入されるであろう司法取引制度においては、自分が有利になりたいがための虚偽供述が制度的にできてしまう。それを考えたときに、今回のような判断が政治活動に関連する事件で行われるというのは大問題だ。これからもこういう判断はいろんな面で出てくるだろうが、今回の裁判では上告して、この控訴審の判断をしっかり調整して、いい先例に結び付けられるようにしたい。