自営の地質調査技術者 渡邊良夫 yupauta2013@gmail.com http://www.egeo-jp.com/ https://www.facebook.com/yoshio.watanabe.1272 https://www.youtube.com/channel/UCl8RTBofvJNU7NyZmR2zwAw
火山岩と火山砕屑岩について

火山岩(volcanic rock)と火山砕屑岩(pyroclastic rock)については、特にフィールドでの産状は大変わかりづらく混乱しやすいので、自分のために整理してみた。
火山岩とはドロドロに熔けた熔岩が固結してできた岩石である。
一方、火山砕屑岩とは火山砕屑物が固結してできた岩石である。ここで火山砕屑物とは火山の噴火によって飛散した物質の総称で、起源としては、新しく地表に上がってきたドロドロに熔けた熔岩が飛び散った物質、噴火以前からあった火山の一部が吹き飛ばされた物質があり、形態的には岩塊、礫、火山灰、火山弾、軽石などがある。
分類は目的によって、形態、成因に基づくものなどいろいろあるが、注意深く読めば理解できるが、フィールドではこれらの区分が困難なことがむしろ普通である。
この理由は、
第一に、岩石の物質の生成と移動、堆積、固結が、他の岩石とは異なり、地質的スケールでは一瞬にして起こってしまうこと。
第二に、火山岩である(冷え固まった)熔岩と、堆積岩に分類される火山砕屑岩が実は同時に同じ場所(厳密には隣接して)形成される(同時異相)こと。
にあると考えられる。
つまり、液体のマグマが、噴出、爆発により、一気に移動し、熔岩流、火山灰となって堆積し、固化する過程が、堆積岩や変成岩とは比較にならないほど急激に行われることから、火山砕屑岩の方は火山岩とも堆積岩とも取れる形成過程を経ており、火山岩か堆積岩かにこだわること自体、あまり意味のないことある(実際に凝灰岩は本によって堆積岩に分類されていたり、火成岩に分類されていたりまちまちである)。
生きている火山の噴火によって、ドロドロに溶けた熔岩や火山砕屑物から、火山岩と火山砕屑岩ができる様子が目の当たりにできることものであるから、当然ながら研究者は両者を同時に研究対象とするし、教科書では一括して扱われる。

特に水中火山岩類については特にむずかしく、山岸による水中火山岩類の記述によれば、
水中火山岩(subaqueous volcanic rocks)-水中熔岩(subaqueous lave)
-給源岩脈(feeder dyke)
        -水中火山性砕屑岩(subaqueous volcaniclastic rocks)
(ここで、すでに火山岩類についての分類に、火山性砕屑岩という堆積岩にも分類される岩石名が使用されている。)
なかでも水中火山性砕屑岩(subaqueous volcaniclastic rocks)は
水中火山性砕屑岩(subaqueous volcaniclastic rocks)
-ハイハロクラスタイト(自破砕熔岩,塊状ハイアロクラスタイト,in-situ brecciaとも呼ばれる)
     (熔岩や岩脈が水冷による脆性破壊により形成されたもの)
-火砕岩(狭義)(爆発的噴火により火口から放出された火山砕屑物が堆積固結したもの)
    -火山性二次堆積岩(volcanic breccia, volcanic conglomerateがある)
(地形営力により本質火砕物が二次的に運搬堆積固結したもの)

ここで、水中火山性砕屑岩(subaqueous volcaniclastic rocks)とは、成因や起源とは関係なく火山性物質からなる堆積岩のことをさしている(水中がつかない火山性砕屑岩も同様)。一方、火砕岩とは実は火山砕屑岩の略称で、火口から噴出した火山砕屑物が直接堆積固結した岩石である。ここでも水中火山性砕屑岩の分類下の細分類で混乱を招くような用語を用いているが、このことがまさに露頭スケールでこれらを区分することのむずかしさを現している。
この中で、特にハイアロクラスタイトは、火山岩と火山砕屑岩に大分類した時に、火山岩の方へ分類した「熔岩」なる用語が「自破砕熔岩」なる用語として用いられている。
さらに、火山性二次堆積岩について、ハイアロクラスタイトが斜面を流動したときに異質物を取り込み、混沌とした岩相を示す堆積岩を呼ぶ場合があり、火砕岩とは漸移的であり、両者の区分が困難なため、量比で便宜的に区分することが多い、述べており、フィールドでは水中火山性砕屑岩内の区分もむずかしいことを認めている。
山岸は記述でわざわざ、水中火山性砕屑岩の識別方法について一項を設けていることにも、フィールドでの認定のむずかしさを現している。
さらに、
ハイアロクラスタイトとは、熔岩や岩脈が水冷による脆性破壊により形成されたものである、との説明にあるとおり、まさに流動し固まりつつある熔岩のうちバラバラに砕けたものであり、本質的には熔岩の一部といえるものである。これを、火山砕屑岩に分類しているので専門家でもなければ混乱が生ずるのも当然と言える。
しかし、すでに述べてきたように、この分類が誤りということではなく、自然界は人の都合で簡単に割り切れるものではないことを物語っている、と強調したい。

参考資料
久野久(1954)「火山及び火山岩」
地学団体研究会(2001)「新版地質調査法」
地学団体研究会(1970)「地学事典」など

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