自営の地質調査技術者 渡邊良夫:http://www.egeo-jp.com/ https://www.facebook.com/yoshio.watanabe.1272 https://www.youtube.com/channel/UCl8RTBofvJNU7NyZmR2zwAw
一昔前に、地盤情報をメッシュデータ化して、数値解析をほどこして、土砂災害等に関する客観的で有意義な結果を得よう、というような研究がはやったことがありました。
そのような研究で得られた結果は、たとえば地形情報に関して言えば、熟練した調査屋が見れば、様々な情報を読み取れる等高線については、情報量の少ない「起伏量図」に置き換えるような、無意味なものばかりだったように思います。さすがに「使えない」と判ったのかその手の研究発表は最近では見られないようになっていました。
ところが、この頃またGISの衣を着た同じような研究が見られるようになって来ました。(たとえば地盤工学会の「土と基礎」の最新号)

私には、そのようなGISの利用で価値のある土砂災害情報が得られるようになるとは、思えません。未来永劫ないと思います。なぜなら、土砂災害に関わる地盤情報は、地質、地形、水などが絡み合ったとても個別的、各論的なものであって、メッシュデータ化できるように情報を単純化した時点で、必要な情報がふるい落とされてしまうからです。
(単純化でふるい落とされてしまう情報で、もっともわかりやすいのは、等高線、崩壊地マークといった地形図の情報です。経験をつんだ調査屋であれば、これらの情報からかなりの土砂災害要因が判読できます)
最近、防災点検の仕事に関わっていていますが、現地を踏査しても、土砂災害を起こす斜面とそうでない斜面の判断はつけがたいのが実情です。
「理想化と単純化を施したモデルとパラメータを用いた数値解析から得られる情報」が、「並み(上や特上ではない)の調査屋が地形図と災害履歴を見てぱっと判断できる程度の情報」を上回るとはとても思えません。
(理想化、単純化した数値解析から得られる情報、そんな程度の精度で良いのなら、すでにいくらでも出来ます。でもそれでは、ここも危ない、あそこも危ないって、その結果、それじゃ車通せるところないね、人の住めるところないね、ってなるから苦労しているわけで..)

GIS自体は良いもので、どんどん活用すべきものだと思います。
ただ、土砂災害情報では多くを期待はできないような気がします。
現時点で最も有意義だと思うのは、既往の資料(災害記録、防災点検資料など)のソースに簡単にアクセスできるようにすることだと思います。
たとえば、「H○年度○○地区地すべり調査報告書」などのソースにです。

インターネットがやっていること、インターネットを介して、タウン情報、不動産情報にアクセスできるなどと同じやり方です。
我々は何故インターネットをこれほど利用するのでしょう。インターネットと言う道具をつかって、思いもよらない(ダイジェストではない)オリジナルの発信者にたどり着けるからではないでしょうか。GoogleEarth等で図上をクリックするだけで、世界中のレストラン情報等々にたどり着けるのは当たり前になっていますが、良く考えると驚きでもあります。

それと同じことをやれば十分であり、正しいGISの利用方法だと思います。

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渡邊良夫_Yoshio Watanabe

自営の地質調査技術者
屋号:いいじお
神奈川県川崎市
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